「ご来店ありがとうございます。一階メインエントランスでございます」
美しいエレベーター嬢の声が響く、ここはカラクリ百貨店。ほしいものは何でも揃う、そんな夢の百貨店を各階止まりでご案内。
レトロポップ、アラビアン、奇妙なマーチ、しっとりバラード……Mamyukkaらしい色とりどりな楽曲で描く、夕暮れに佇む不思議なお店の物語。
2017年10月29日秋春M3第1展示場 【 A-24b Mamyukka 】 にて頒布開始!
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二十世紀も幕れゆく世紀末。人生に疲れ氣味の若いオーエル(キョーコ)はふと、会社を出たその足で驛前の古い百貨店に立ち寄る。
氣まぐれにいつもとは違う場所に行きたくなってぐるぐる回した回轉扉。懐かしさと、どこか安心感を覺える空氣に一瞬心が解れる。
しかしくたびれた建物はどこか自分と重なり、どのフロアも人はまばらでがらんどう。店る商品もいまいちばっとするものがない。
やっばり來るんじゃなかったと下に降りようとしたところで頭上の「入りロ/出口」の矢印が目に入る。特に何も考えず、ムらふらと周りを見ながらキョーコは矢印を追いかけた。
ーーしかし、とうにもおかしい。
東階段より三階へ、四階南トイレの隠し屏を拔け、五階六階をエスカレーターで通過……出口は一階のはずなのに何故か上に登らされ、いよいよ矢印を無視して階段で降りてしまおうと思ったその時。一台のエレベーターが屏を開けて待っているのを見つけた。
誰もいない昇降機。一階に向けて動き始めたその箱の中でキョーコは大きなため息を漏らす。
昔はもっと、きらきらした場所に思えたんだけどなーー。
子供の頃、両親と一緒に行った百貨店はとても樂しくて、わくわくして……そんな氣持ちが思い出したくて足が向いたのかもしれないと氣づき、まわ無馱骨だったけれどと自嘲しながら目を閉じた。
ちんっと音がすると共に扉が開く。同時に顔をあげた彼女は思わず「え?」と声をあげた。
「お母さんこれ買ってー!!!」
「すみませんこれ新しいものはないの?」
「あれは何階だったかしらねえ」
「わしはべンチで待ってるから」
「晚御飯何買って歸ろうか」
溢れかえるお客の波。さっきまでの靜寂が噓だったかのように。しかもよくよく見ると店の雰囲気まで全く異なっており、何やら目を引くものがずらりと並んでいる。あまりのことに動けずにいるとさらにすぐ横からも声がした。
more...
美しいエレベーター嬢の声が響く、ここはカラクリ百貨店。ほしいものは何でも揃う、そんな夢の百貨店を各階止まりでご案内。
レトロポップ、アラビアン、奇妙なマーチ、しっとりバラード……Mamyukkaらしい色とりどりな楽曲で描く、夕暮れに佇む不思議なお店の物語。
2017年10月29日秋春M3第1展示場 【 A-24b Mamyukka 】 にて頒布開始!
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二十世紀も幕れゆく世紀末。人生に疲れ氣味の若いオーエル(キョーコ)はふと、会社を出たその足で驛前の古い百貨店に立ち寄る。
氣まぐれにいつもとは違う場所に行きたくなってぐるぐる回した回轉扉。懐かしさと、どこか安心感を覺える空氣に一瞬心が解れる。
しかしくたびれた建物はどこか自分と重なり、どのフロアも人はまばらでがらんどう。店る商品もいまいちばっとするものがない。
やっばり來るんじゃなかったと下に降りようとしたところで頭上の「入りロ/出口」の矢印が目に入る。特に何も考えず、ムらふらと周りを見ながらキョーコは矢印を追いかけた。
ーーしかし、とうにもおかしい。
東階段より三階へ、四階南トイレの隠し屏を拔け、五階六階をエスカレーターで通過……出口は一階のはずなのに何故か上に登らされ、いよいよ矢印を無視して階段で降りてしまおうと思ったその時。一台のエレベーターが屏を開けて待っているのを見つけた。
誰もいない昇降機。一階に向けて動き始めたその箱の中でキョーコは大きなため息を漏らす。
昔はもっと、きらきらした場所に思えたんだけどなーー。
子供の頃、両親と一緒に行った百貨店はとても樂しくて、わくわくして……そんな氣持ちが思い出したくて足が向いたのかもしれないと氣づき、まわ無馱骨だったけれどと自嘲しながら目を閉じた。
ちんっと音がすると共に扉が開く。同時に顔をあげた彼女は思わず「え?」と声をあげた。
「お母さんこれ買ってー!!!」
「すみませんこれ新しいものはないの?」
「あれは何階だったかしらねえ」
「わしはべンチで待ってるから」
「晚御飯何買って歸ろうか」
溢れかえるお客の波。さっきまでの靜寂が噓だったかのように。しかもよくよく見ると店の雰囲気まで全く異なっており、何やら目を引くものがずらりと並んでいる。あまりのことに動けずにいるとさらにすぐ横からも声がした。